前回からの続きです。
第2回嬬恋万座ヒルクライムに出場した 前日~当日朝編
https://cycle.kagohara.net/2013/09/16150.htm
朝食が終わって部屋に戻ったのが7時ころ。
TVでは今日未明に決まった2020年の東京オリンピック・パラリンピックで大騒ぎ。
しかし私の心は揺れていた。
「本当にDNS(出走取りやめ)でいいのだろうか・・・」
「しかしこの天気では走るのは無理だろう」
「あれ、でも雨が小降りになってきたかな?」
「でもあっちの方は雲がかかってて何も見えないぞ」
雨は相変わらず結構な量が降っている。
95%は出たくないのだが、出たい気持ちがほんの5%ほど残っているのが我ながら女々しいところ。
妻も「ムリしないでね」「また次があるよ」「ゆっくり温泉に入って帰ろう」と言う。
その通り、全くもってその通りだ。
出走するためには7時45分に外の広場に集合しなければならないが、時計を見るともうすでに7時30分過ぎ。
そもそも今朝は何の準備もしていないんだよね。
今この瞬間も浴衣を着ているし、自転車には空気もロクに入っていない。
ドリンクも作っていないし、着替えや雨具や補給食も用意していない。
時間的にはもう既に間に合わない所まで来ている。
しかし、それでもまだ私は迷っていた。
迷いを断ち切るためにはさっさと温泉に入ってしまえばいい。
そうだ、そうすればあとは時間が解決してくれる・・・
あれ、携帯がなってるな?
携帯を見るとくるかめさんとひーくん夫妻からのメールが来ている。
なに?
この悪天候の中、どうやら3人とも出場するだって!?
マジかよ・・・(汗)
その時、頭のなかで幼き頃に聞いた父の声が聞こえた。
「ダニエルや、道路を渡る時の心構えを教えよう」
「うんダディー、教えて!」
「渡る時は思い切って渡る、渡らないなら渡らないことが大切だ。渡ろうとして道路でウロウロしていたら轢かれてしまう。何事も中途半端が一番いけないんだよ」
「そっかー、なるほどー」
親父、俺は今どこにいる?
道路の真ん中でウロウロ迷っている状況だよな?
スパっと決めないといけないよな。
彼らと一緒に定峰で練習した光景がふと脳裏によぎる。
あの苦しい練習は何のためにやったんだ?
彼らに付き合うためか?
いや、違う。
自分のためだろう!
ここで走るためだろう!!
そうだ、俺は走りたいんだ!
親父、息子の勇姿を遠い空から見守っていてくれ!
目の前に薄ぼんやりとかかっていた心の霧が一瞬で晴れる。
俺の身体に、眼に、魂に、力が蘇っていくのを感じる。
デヤァァァァァァーーーーーーーーーーーー!!!!!
万座高原ホテルに獣のような怒号が響き渡る!
そうと決まれば急がなくてはならない。
速攻で着替え、とりあえず必要そうなものを片っ端からバックパックに詰め込む。
ボトルは空だけど粉末ドリンクがあれば何とかなるだろう。
タイヤの空気は少ないが、幸いなことにチューブレスタイヤだ。
かなりの低圧でも問題はないし、逆に下りではそのほうが安全のはず。
下で空気入れを借りて入れなおせば走れるだろう。
ホテルを出れば集合場所までは1分で到着。
そこには万座エリアに宿泊した参加者たちが集合していた。
ざっと約200名といったところだね。
みんな走る気マンマンだ。
しかしまあ、とにかく寒い寒い・・・
8時10分ころ、グループごとに下山開始。
1グループ100人だけど、スピードを抑えつつ車間距離もあけるとなると、かなり列は間延びしてくる。
こりゃあ降りるのに時間かかるな。
それ以前に事故がなければいいけど・・・
約20kmの下りだけど、雨のせいでブレーキの効きは通常の1/3ほど。
ブレーキを握る手がとても疲れる。
そしてブレーキパッドがみるみるすり減っていく。
あー、スペアを買わないとなぁ~
中間地点の料金所で一旦休憩。
下りはペダルを漕ぐことは殆ど無いので体力は使わない。
ということは身体は温まらないわけで、この天気では非常にキツイ。
しかも雨が強くなってきたぞ・・・
結局パレードスタート会場に着いたのは9時過ぎ。
下山に1時間弱はかかったぞ。
雨は相変わらず、風もちょっとある。
おっと、ゆっくりしている暇はない。
荷物を預けられる時間が迫っているし、タイヤに空気も入れないといけない。
会場でくるかめさんとひーくん夫妻と合流。
「あれ、ダニエルさん、DNSじゃなかったの!?」
「ばかやろう!お前たちが走るのに俺だけぬくぬくと温泉に浸かっている訳にはいかないだろう!黙って俺についてこい!カゴハラウォーカーズのキャプテンが誰なのか思い知らせてやる!」
と、寒さで歯がガチガチ鳴っているのがバレないように強がってみせる。
って、写真を見ると必死で口に力を入れているのが判っちゃうね(笑)
私達のカテゴリーのパレードスタートは9時55分の予定だったんだけど、どうやら下山にかなり時間がかかったみたい。
大体30分遅れでパレードスタートです。
待っている間も雨に濡れた身体はさらに冷え、体力はどんどん失われていく。
身体は震え、歯はガチガチで噛み合わない。
くぅ~、早くスタートさせてくれ~!
※今回の記事はやや誇張された表現があります事をお詫びいたします。また、父は元気です。
続く
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